
沖縄県今帰仁村にてアトリエを構え、植物染色を軸に衣服や布物を制作。その際に出る布ハギレで紙を漉き、漂流物を使って作品を制作しています。植物染色の素材はできる限り自身で採取し、布や紙にその色をうつしとるように染めています。日々暮らす中で出会う自然の風景、匂い、質感。自然や素材と向き合いながら、自然と人、人と人との関係性を見つめ直し、触れる・見る・知ることから生まれる感覚のつながりを作品にこめています。
植物染色の色を通して、自然のリズムや存在をより身近に感じられるのではないかと考えています。「何がそこにあるのか」「なぜその色が生まれるのか」「この地球にこんな色があるのか」。頭と身体で理解し、感覚をそっと開くことで、風景の輪郭は変わり、より鮮明になっていきます。そうした変化が、手にとってくれる人や使ってくれる人に伝わればうれしいです。
植物を染料として抽出し、その色を紙に定着させるという行為は、自然の循環の一部に手を差し入れ、そこに人の身体性や時間を重ねることでもあります。
沖縄で染めた色は、土地の気候・土壌・植物の気配を帯びながら、やがて屋久島という別の島へと運ばれていきます。ふたつの島の間に存在する海のゆらぎ、風の違い、森の時間。それらは決して固定されたものではなく、出会いと変化をくり返しながら、私たちの感覚や認識を更新し続けます。
かつて海を通じて人と物が往来したように、色や素材もまた、場を超えて巡りゆく存在であること。その循環のなかに、今日の私たちのまなざしや感性をひらく余白があることを、静かに提示したいと考えています。
- @kitami_o
