REPORT

ash Design & Craft Fair 2025

2008年に産声を上げた『ash Design & Craft Fair』。第18回目の開催となった「ash 2025」は、これまでの歴史を大きく更新し、南九州のカルチャーの成熟を強く印象づける開催となりました。

鹿児島市中心部のみならず、郊外や離島、そして宮崎へと点在していた「点」が「線」となり、ついに面となって広がりゆく南九州の新しいクリエイティブの地図が、かつてないスケールで描かれました。

会期中、全91会場・116組の作り手がそれぞれの舞台で作品を発表。そこには、単なる「展示と販売」の枠組みを超えた、ashならではの4つの重要なトピックがありました。

1. 伝統工芸と現代アート・デザインの幸福な交差

今年の象徴的な取り組みとなったのが、いちき串木野市を舞台にした「亀崎染工(亀染屋)×美術作家・平川渚」による通年のコラボレーションです。 伝統的な印染の技術に現代美術の「糸を編む」インスタレーションが融合した『光を染色する』は、3度目のタッグとなる今回も、会期中の16日間に留まらず、一年を通じた対話と試行錯誤を経て結実しました。

さらに、大工工務店〈TAJIKEN〉と家具デザイナー〈sail〉が手を組んだ海上輸送コンテナショールーム『Second Hub』のアップデートや、地域固有の素材に新たな息吹を吹き込む〈溶岩加工センター〉への作家参加など、デザイン、クラフト、建築, アートが有機的に溶け合う表現が、市内中心部にとどまらず各所で生まれました。

2. 多様な空間が舞台に。お寺、ギャラリー、暮らしのデザイン

展示会場の多様性も、今年のashの景色を格段に豊かにしました。 〈真宗大谷派鹿児島別院〉といった歴史を持つ荘厳な空間が県外のクリエイターに開かれたほか、〈MAKAI gallery〉や〈磯畑写真事務所〉といったそれぞれの美学を持つ拠点が新しく会場として参加。

さらに、桜島港フェリーターミナル内の〈MINATO CAFE〉や老舗ビリヤード店〈アルファ〉、都城〈スノーピーク・キャンプフィールド〉、宮崎の〈椿古道具店〉なども加わり、これら多様な空間のすべてが、作家の個性を引き出す最高の舞台となりました。

また、空間そのものが作品である〈シンケンスタイル〉所属のオーナーが自ら設計プラン・デザインを手がけ、運営する「民泊施設」も会場としてオープン。単に作品を鑑賞するだけでなく、南九州の良質な「暮らしのデザイン」そのものに深く没入できる場が提供されました。

3. 行政と街を巻き込む、エリア自発の熱量

いちき串木野エリアでは、行政が自発的に公式LINEでashの出展者や街巡りを大々的に紹介するなど、地域一体となったバックアップが実現。 会場側が自発的に定休日を揃え、大人の夜の街巡りを提案する「夜ash」を企画してエリア全体の回遊性を高めるなか、地域の人気店であるジャズ喫茶〈パラゴン〉が、いちき串木野市出身・東京都在住のアートディレクター〈REINA NICO〉の展示会場として参加するなど、事務局主導ではないエリア自発の理想的なコミュニティの形が体現されました。

4. 地図の拡張:「食・宿・温泉」のライフスタイル

こうした街巡りの起点として、ガイドブックの存在も大きな役割を果たしました。 本誌では〈そば茶屋 吹上庵〉や〈とんかつ竹亭〉といった地域に長く愛される飲食店や宿泊施設に加えて、地元の〈温泉施設〉などを紹介。より「ディープなローカル体験を提案する試み」を企画したほか、今回は新たに「クラフトビール」の出展も増え、南九州の豊かな「食」のカルチャーも融合しました。 これらは来場者にとって、ashをフックにした「街の新しい楽しみ方」を再定義する新しい羅針盤となりました。

もちろん、ここに書き尽くすことはできないほどの、無数の出会いや小さなドラマがそれぞれの会場で生まれていました。

デザインや現代アートの展示にはなかなか足を運ばないような高校生や大学生といった若い世代も、一冊のブックレットやスマホのデジタルマップを片手に街巡りを楽しみ、クリエイターの情熱の現場に直接触れる。 この瑞々しい風景こそが、ashが長年耕し、次の5年、10年へと繋いでいく南九州の文化の底力です。

こうしてashのカルチャーとしての純度が高まるにつれ、自治体や大手ローカル企業からも参加や協業のラブコールが寄せられるようになり、運営体制の再編など、組織としても大きな一歩を踏み出したash。

私たちはすでに、2026年秋に迎える第19回の開催に向けて歩みを始めています。 来年もまた、デザインやクラフトとの出会い、そして愛おしい南九州の街の旅のなかで、皆様とお会いできることを心より楽しみにしています。

ash Design & Craft Fair 2025

ash 2025 実績概要データ

名称:ash Design & Craft Fair 2025(第18回)
会期:2025年11月22日(土)〜 12月7日(日)[16日間]
開催場所:鹿児島・宮崎県内各所(離島含む)
参加クリエイター:116組
展示会場(PLACES):91箇所
公式ブックレット発行部数:15,000部
公式ハッシュタグ:#ash_2025
特設サイト:ash Design & Craft Fair 2025

#ash_2025

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